暮らしの場としての‘庭’

~暮らしの場としての‘庭’~

かつて訪問した武家屋敷の庭が、ずっと心に残っています。
それは、金沢市にある寺島蔵人邸のお庭。
園庭づくりの参考になると思うのでご紹介しますね。

その庭では、
・室内から眺める庭(部屋からの景観)
・室内から庭に出た時に、散策しながら目や耳、肌や鼻で楽しめる庭
・地面の起伏
・生活(食)のための庭

が取り入れられていました。

こんなふうに、
・建物の縁側(図:右下)
・縁側前には、モミジやドウダンツツジなど目や耳、肌や鼻で楽しめる庭(図:右上)
・景観や散策時の体に変化をつける丘(図:左上の円)
・建物や庭の脇には、クリやカキ、フキ、ミョウガなど食べられる植物が植えられた、生活のための庭(図:左下)
(訪問中にざっと描いたので、乱雑ですみません。)

この構成は、園庭にもぜひ生かしていただきたいなぁと思います。

<室内から眺める庭(部屋からの景観)>
さまざまな草木が日々刻々と変化していく様は、ただただ眺めるだけでも心が落ち着いたり、逆に心が動き喜びを感じたりしますよね。
そして風を感じ、日の明るさ温かさ、室内側の暗さや涼しさを感じ…。

<室内から庭に出た時に、散策しながら五感で楽しむ庭>
「庭」ならではの、草木、土、水、日や影、風、季節を散策しながら楽しめるようになっています。
大きく育った木々に包み込まれる心地よさ。

一歩一歩、見た目も踏み心地も異なる踏石。足元の目を落とす場所にも四季折々の草花。
所々に据えられた水場。

そして歩みに変化を与えてくれる小山(上の絵にて)。

<生活(食)のための庭>

栗や柿の木、ミョウガやフキなど。(絵の中ではショウガと書いていますが、ミョウガだと思います)
食べ物となる植物が植えられています。
武家屋敷なので、何か問題が起きて家に籠る場合もあるからなのか?と想像したり。(^◇^)

私も武家屋敷をたくさん見てきたという程ではないですが、庭園と合わせて、こうした<生活(食)のための庭>を組み込んでいるお庭は、あまり見たことがないのですが、生活と庭がしっかり繋がっていて良いお庭だなぁと思います。

この3つの視点は、園庭を考える時も意識していただくと良いのではないかと思います。

<室内から眺める庭(部屋からの景観)>
・園舎周り/保育室前はどんな環境を取り入れるか?各部屋の年齢によっても傍にそばにあると良い環境は違ってきますよね。^^
・各部屋からの外への眺めはどうか?
・そして夏の暑さや冬の寒さを和らげるためには?

<室内から庭に出た時に、散策しながら五感で楽しむ庭>
・戸外や庭だからこその四季折々の自然と触れ合えるように。
・子どもたちが、五感を使い、心や体を自然とうごかすような環境になっているかな?
・そして、園庭全体にさまざまな楽しさがあるように。(園庭のどこに行っても同じ、ではなく)

<生活(食)のための庭>
子どもが、野菜や果樹など食べ物を与えてくれる植物と日々関わっていけるように。
・日々接しやすい位置かな?(園庭の隅や奥の方だけになっていませんか?)
・子どもが日常的に食べるものの大元の、様々な植物があるかな?
・その野菜や果樹は園やご家庭の食や関連する活動に繋げられているかな?

などなど。

ぜひあなたの園庭も、暮らしの場としての‘庭’ の3つの視点で見てみていただければと思います。^^

【関連するこれまでの記事】
こちらの記事もよければ。
・園庭と室内とのつなぎについて。室内だけ外だけではない保育の展開についての工夫。https://ameblo.jp/hagukumino-niwa/entry-12629501657.html
・樹木を活かした建物の温熱環境調整についてはこちら。→ 暑さ対策:植物を活かして、快適な暮らしの空間を! https://ameblo.jp/hagukumino-niwa/entry-12753029115.html
・草花や虫たちと心通わす 菜園デザイン https://ameblo.jp/hagukumino-niwa/entry-12754318418.html
・園庭ではどのような育ちがある? 5:樹木・草花・菜園 https://ameblo.jp/hagukumino-niwa/entry-12568894512.html
・田んぼ・水辺ビオトープなど自然とつながるスペース https://ameblo.jp/hagukumino-niwa/entry-12290408373.html

園庭研究所 石田佳織
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