ネイチャーポジティブな保育・園へ

 〜ネイチャーポジティブな保育・園へ〜

前記事「生き物の多様性が保たれた社会へ」の続きです。

私たちの暮らしを支える「生態系サービス」や生態系サービスを支える「生物多様性」が、この50年間で劣化したことが国際的に報告書等で指摘されています。(生態系サービスについては前記事をご覧ください)

そうした中で、

2050年には「自然と共生する世界(Living in Harmony with Nature)」を達成:2050年ビジョン。

そのための短期的目標としての、

2030年までに、生物多様性が失われている状況を止め、回復の軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ(自然再興)」の実現(*)

が、COP15(2022)で「昆明―モントリオール生物多様性世界枠組」として採択されました。

画像は、生物多様性が失われている現状から、2030年を機にプラスに反転させていくイメージグラフ。
(環境省. 2030生物多様性枠組実現日本会議(J-GBF)Webサイト「J-GBFネイチャーポジティブ宣言」より)

(*)ネイチャーポジティブについて「昆明―モントリオール生物多様性世界枠組」での記載
:2030 年までに「必要な実施手段を提供しつつ、生物多様性を保全するとともに持続可能な形で利用すること、そして遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を確保することにより、人々と地球のために自然を回復軌道に乗せるために生物多様性の損失を止め反転させるための緊急の行動をとること。

日本も、この枠組に乗っ取り、動いていくことを表明しています。

そして、5つの基本戦略に取り組んでいくことを示しています。
※ 園(保育・幼児教育施設)に関わるものを黒太字にしています。

1)生態系の健全性の回復
:2030 年までに陸と海の30%以上を保全する「30by30」目標の達成。
 OECM地の保全。(←30by30とOECMについては次回書きますね)

2)自然を活用した社会課題の解決
:自然の恵みを活かした多様な社会課題の解決(気候変動緩和・適応、防災・減災、資源循環、地域経済の活性化、人獣共通感染症、健康など)。

3)ネイチャーポジティブ経済の実現
:政府と事業者等が連携し、評価方法の確立や制度・システムの見直し。
 事業活動による生物多様性・自然資本への負荷を低減し、正の影響を増大させるための施策実施。

4)生活・消費活動における生物多様性の価値の認識と行動(一人一人の行
動変容)

:新たな技術等も活用しつつ、現代に即した形で、かつての生活・消費活動と生物多様性の密接な関わりを取り戻し、より深化させるための施策実施。

5)生物多様性に係る取組を支える基盤整備と国際連携の推進
生物多様性の評価のための基礎的な調査・モニタリングの充実
 利活用しやすい情報の整備。
 取組の担い手確保等。
 必要な法制上、財政上又は税制上の措置その他の措置。
 地球規模での生物多様性の保全への貢献のための国際協力。

この「ネイチャーポジティブ」は、園庭や地域環境での保育とも、大きく関わってくるかと思います。

あなたの園で、園内(室内、園庭)の環境や活動は、ネイチャーポジティブの実現に向けて子どもが体験できるものになっていますか?

地域へ散歩に出られる際はいかがですか?

園庭・地域環境については、次回の記事「30 by 30」やOECMにも関わってくるので、そちらで書きますね。

活動については、今、園庭調査研究グループで「循環と保育」ブックレットを作成していますので、発刊・Web公開されましたらご案内しますね。^^

(参考:環境省(2023). 生物多様性国家戦略 2023-2030~ネイチャーポジティブ実現に向けたロードマップ~

園庭研究所 石田佳織

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※ 園内研修や団体研修、園内研究支援など、いつでもお受けしています。ご希望の内容や方法に沿って構成いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

園庭研究所HP:https://enteiken.com/
これまでの園庭研ブログ記事(2012~2022):心と体と学びとはぐくむ園庭づくり