~園庭の土環境に悩んでいませんか?~
滋賀県での幼児里山保育指導者勉強会「子どもにまなぶ 自然にまなぶ 〜子どもとつくる園庭:森や自然と子どもに学ぶvol.3 子どもが育つ場は空気や水が滞っていませんか?〜」で、造園家で「大地の再生TamTam」代表の松下泰子さん・お仲間の森大画さんと一緒に、お話させていただきました。
(滋賀県幼児里山保育指導者育成事業/主催:びわ湖の森のようちえん<滋賀森のようちえんネットワーク>)
午前は松下さん・森さんから、実際の園庭で、子ども・先生・保護者でできる「大地の再生」ワークショップをしていただきました。
「子どもたちに動植物と触れ合わせてあげたいのに、植物が育たない…」
こんな園庭土壌のお悩みを、本当によく伺います。
これは、建設にあたって、山砂など有機質が少ない土を持って来られた場合が多いこと。
そのため、地表面の土であれば当然含まれる植物の種も少なく、植物が生えてきにくい。
また、機械で踏み固めてカチカチにされているため、動植物が生きにくい。
種が地表面に落ちても、根を伸ばしにくくい。
植物が育たず、みみずやモグラなど動物も暮らせないと、植物が育つのに欠かせない土の団粒構造も育っていかない。
(健康な土壌については、こちらの記事でもご紹介しています。→ 健康な地面へ 1:土の団粒構造、健康な地面へ 2:色々な自然がつながって保たれる土の健康)
そうした中で、これまで園庭研ブログでもご紹介してきましたが、
・刈った草や落ち葉を園庭に巻いておくこと。(参考:関西学院幼稚園さん 〜刈草や落ち葉を撒く〜)
・クローバーなどマメ科の植物を植えること。
・どんぐりなど根を深く伸ばしやすい樹木を植えること。
・木の根周りに、造園の伝統的工法である竪穴をいくつか開ける(土中の空気や水の移動が起こりやすい)
などの土壌改善策があります。
そして注目したいのが、この「大地の再生」の方法です。
こちらは、伝統的な工法をさらに発展させて矢野智徳さんが研究考案されてきたもので、全国の造園屋さんに広まりつつあります。
松下さん森さんも矢野さんと共に取り組まれています。
(石田も一度矢野さんの大地の再生講座を受け、その土地に風や水が通り始める変化を体で感じて、感動しました)
そこでの雨水や風の動き、園周辺の環境や地形も見ながら、地表面にちょっとした凸凹や流れをつけたり、樹木の剪定(風の剪定)をしていきます。
それも、大掛かりな機械ではなく、誰もができるようにショベル・鎌・剪定バサミ・ノコギリで手入れしていきます。(もちろん、必要に応じて、適宜機械を入れた根本的な土壌改善もしながら)
松下さんは元小学校教諭なので、子どもたちも共に土を育てていけるようにサポートしてくださるので、おすすめです。^^
写真は、木の根周りに縦穴を掘り、そこに炭や剪定した枝を入れているところ。縦穴ができると地中と地上部で空気の流れが起き、合わせて土中の水も動きだし、その周りの土環境が少しずつ良くなり、植物も根を伸ばしやすくなります。
枝を入れておくことで穴が埋まりにくく、適度に空隙徐々に枝が分解されていく中で土の栄養となります。炭は微細な空隙がたくさんあるため、微生物が暮らしやすくなり、結果土環境が良くなっていきます。
こちらは、風の剪定。本来風に揺すられて折れたり伸びにくくなる辺りで剪定していきます。ノコギリ鎌でザッザッと刈っていくことで、植物にとってより自然で負担のない剪定になります。根は地上部の樹形とリンクしているのですが、こうして風の剪定をしていくことで、根の育ちも安定していきます。
こちらは、地表面の水の流れを、地形や樹木の位置に合わせて作っているところ。ちょっとした溝が、地上部や地面の水や空気の流れを少しずつ改善してくれます。
詳しくは、最近矢野さん(他)が出版されましたので、ぜひご覧ください。
『「大地の再生」実践マニュアル: 空気と水の浸透循環を回復する』→ Amazon
現在、浦堂認定こども園さん(大阪府高槻市)とTamTamさんで園庭での大地の再生を行われています。
環境再生のためクラファンにも取り組まれています。寄附のお返しに視察も受け入れられていますので、ご興味のある方は是非。→ 浦堂認定こども園さんHP
園庭研究所 石田佳織
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※ 園内研修や団体研修、園内研究支援など、いつでもお受けしています。ご希望の内容や方法に沿って構成いたしますので、お気軽にお問い合わせください。
園庭研究所HP:https://enteiken.com/
これまでの園庭研ブログ記事(2012~2022):心と体と学びとはぐくむ園庭づくり